ちゅ、


電車の中、待ち合わせの新宿駅が近付くにつれて心臓が今までにないくらいドキドキとした


油断したら本当に心臓が飛び出してくるんじゃないかと思うくらい


他の人にも鼓動が聞こえるんじゃないかと思うくらい、心臓がうるさかった


碧くんに会うだけでこんなにドキドキしてたら心臓がいくつあっても足りない


「新宿着いたから待ってるね」


碧くんからの連絡にさらに脈が速くなる


死んじゃう


本気でそう思うくらい心臓が少しも休まらなかった


新宿駅について、深呼吸しながらゆっくりゆっくり歩く


少しでも落ち着けてから会わないと、私が爆発しそうだった


少し落ち着いたくらいで碧くんを見つけた


また心臓が速くなる


碧くんに向かって走り寄って抱きつく


私が勢いよく抱きついても碧くんはびくともしなかった


「走ったから汗かいてるよ」


碧くんがそう言う


「走ったの?」


「ちょっとね、あとで話すよ」


そう言って碧くんが手を差し出した


笑顔でその手を握って歩き出す


先週と同じ居酒屋で、席について碧くんに「いつもビールだよね?」と確認する


「その前に、これ」


碧くんがカバンの中から有名ブランドの紙袋を取り出す


「えっ?えっ?」


驚きすぎて何も言葉が出ない


「これ買ってて遅れそうになって走った」


とりあえず受け取って、恐る恐る中身を確認する


「大丈夫、指輪とか重いものじゃないから」


そんな心配はしてない


綺麗に包装された箱を開けると、ダイヤ付きのネックレスが入っていた


ガチなやつだ


つけてたネックレスを外して、もらったネックレスをつける


「ありがとう」


「早いかなとは思ったんだけど」


「ううん、嬉しい」


早いよ、という言葉は飲み込んでそう答えた


嬉しいものは嬉しい


碧くんなりに私を安心させようとして、こんなに早くプレゼント用意したのかな


そこからまた長々とおしゃべりして、最近カラオケ行ってないからカラオケ行きたいという話になった


居酒屋を出て、近くのカラオケに行く


碧くんは定番の恋の歌を入れて、私は自分の趣味をひた走る


途中でしゃべり始めてカラオケがBGMになった


「ねぇ、私と結婚する気ある?」


「あるよ、なきゃネックレスなんかあげない、茜ほど一緒にいて楽しい人はいない」


「みんなそう言う、それで何ヶ月かすると私の幼稚なところに幻滅して嫌われる」


「そんなことないよ、俺は嫌いにならない」


「わからないじゃん、これから先どうなるかなんて、いつ私に愛想尽かすか」


お酒が入ってるのもあって私のネガティブなところがどんどん出てくる


表面上明るく振る舞えても、根底は誰よりも真っ黒だから


「私にいいとこなんて、一個もないから、碧くんは完璧すぎて私じゃ釣り合わない」


言いながら泣きそうになる私を碧くんは困ったように「そんなことない」と慰める


こんなにめんどくさい自分も大嫌いだし、この状況が情けなくて、どんどん悪い方向に精神が傾いていく


「もう」


碧くんがそう言って、私にキスをした


「俺は茜を絶対嫌いにならない、ずっと好きでいる自信がある」


その言葉も、キスも、嬉しくて、どこまで誠実なんだろうと思った


「私も碧くんが好き」


そう言ってもう一度ちゃんとキスをする


ソファに横になった碧くんに馬乗りになって、何度も何度もキスをする


舌を絡ませて、お酒の味がして、さらに酔ってしまいそうだった


碧くんの首の目立つところにキスマークをつけて、絶対に誰にも渡したくないと思った


散々盛り上がったくせに、碧くんはそれ以上何もしてこなかった


駅まで見送ってくれて、そのまま解散


別にいいんだけど、と思いながら家に帰った


土日は予定があるから碧くんも私も休みだけど会えないなと思ってたら、日曜日の私の予定に合わせて、車で来ると言ってくれた


碧くんの家から私の家まで車で一時間、夕方くらいに碧くんから私の家の近くに着いたと連絡がきた


碧くんの待つコンビニまで行くと、碧くんが車の外で待ってた


駆け寄っていって抱きつく


「会いたかった」


素直にそう言ってキスをねだった


チーズケーキのお店まで行く途中で碧くんが


「昨日高校からの友達の貴と飲んだんだけど、キスマーク見つかって、でもキス以外してないって言ったらイカれてるって言われた」


と笑いながら話した


「確かに、私もそう思う」


そう言って碧くんの首元を見ると、あまりにもはっきり残ってるマークに、酒の勢いとはいえ恥ずかしくなった


お店について、軽く食事して、閉店の時間までしゃべり倒した


私を家まで送って、一時間かかる道を碧くんが帰っていった

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