ちゅ、


翌朝、いい匂いで目が覚めた


碧くんはキッチンでフレンチトーストを作っていて、もうほとんどできあがっていた


私は洗顔と歯磨きをさっさとしてテーブルに着く


「いただきます」


言い慣れない言葉を口にして、碧くんと一緒に朝食をとる


幸せだ


おいしいおいしいと言いながらペロリと食べて、食器を片付ける


身だしなみを整えて、近所のスーパーまで向かう


お昼何食べたい?夕飯何食べたい?と聞いてくる碧くんに、食に興味のない私は必死に考えてカレー、ハンバーグと返す


なんでもいい、というのが本音だけど、そんなことは言えない


私の「なんでもいい」は本当に「なんでもいい」んだけど、言われた側はきっといい気分がしない


好き嫌いはあれど、本当に食べれないものはほとんど無いし


かと言ってこれが食べたいというものは特にない


ストレスが溜まった時にジャンクフードが食べたくなることはあっても、それ以外でどうしても今日これが食べたいということがない


一番好きな食べ物はじゃがいもで


じゃがいもがメインの料理ならどんなものでも好きだ


でもじゃがいもが食べたいなんて恥ずかしくて言えない


毎日同じ食べ物でよくて、


一日一食でよくて、


お腹は空いても食欲がないこともよくあるし、


一日中食事摂るのを忘れてた、なんてこともよくある


まともな食事ではなくスナック菓子で済ますのもよくあって、さすがにそれはよくないとわかってはいる


料理もしないから、どんなメニューが楽でどんなメニューが大変かもわからないし、


どんな調味料でどんな味になるかもわからない


ナムルが好きなくせに、ナムルの味の付け方を知らない


そんな私がその日のメニューを考えるのは結構大変で、この調子だとすぐネタ切れになるな、と思った


碧くんとの買い物のあと、お昼にカレーを食べて、おやつの時間ごろ、何もしてこない碧くんに私が我慢の限界になった


キスはしても、胸や下半身には触ってこない碧くんに、不安と自信のなさでイライラしてくる


「何もしないの?」


「大切にしたいからゆっくりでいい」


「触ってもいいよ」


「そのために家に呼んだわけじゃないからいいんだよ」


「抱きたいと思わない?」


私の自信がどんどん萎んでいく


たった1人、たった2回しか経験がなくて、そのうちの1回なんてカウントしていいかどうかも怪しいのに、自信もクソもないんだけど


「大切にしたいんだよ」


碧くんがまた同じことを言う


「うん…」


しぶしぶ頷く私に、碧くんが優しくキスをした


そのキスがどんどん深くなっていく


「触るよ?」


碧くんがそう言って服の上から私の胸を撫でる


ブラのホックを外して直接触られて、私もだんだんと興奮してきた


碧くんがスカートの中に手を入れて、下着越しに恥部を撫でてくる


自分から誘ったくせにどんどん自信がなくなって、嫌われるかもしれないと不安になってきた


私のスカートのチャックを下ろした碧くんが、「脱いで」と言った


着ていた服を全て脱いで、碧くんもパンツ一枚になる


下着を脱いだときに、自分が濡れてることに気付いてなんとも言えない気持ちになる


パンツ越しでもわかる碧くんのそそり立ったソレを傍目で見て、ちゃんとできるか心配になった


とにかく自信がないのを存分に自覚しつつ、それでも興奮している私がいて、碧くんと早く繋がって安心したかった


碧くんがゆっくりと私を解して、私は碧くんの中指だけで蕩けそうになる


何度も声が出て、そのうちにイってしまった


「ねぇ、入れて」


「まだキツすぎるから入れたら痛いよ」


「それでもいい」


私だけが気持ちよくなってるのが嫌で、恥ずかしくてたまらなかった


「だめだよ、処女みたいだもん」


その言葉に私の顔から血の気が引く


「違う、ちゃんと入るから」


「大丈夫だから、焦らないで」


「処女じゃない、したことあるよ」


慣れていないことが恥ずかしくて、必死に否定して、だんだんと自分が冷めていくのがわかる


「お願い、入れて」


私の懇願に負けて、碧くんがソレを入口に押し当てる


十分に濡れてる私の恥部に、碧くんが少し入ってきたところで痛くてたまらなかった


「痛い…」


「ほらやっぱり」


「いいから、大丈夫、入れて」


「また今度にしよう、もっとゆっくり解さないと」


碧くんの気遣いが、まるで自分が否定されたようで泣きそうになる


「俺も久しぶりだから上手くできなくてごめん」


謝られるのもつらくて、もっと、ちゃんと経験を積んどくんだったと後悔する


「私は処女じゃない…処女みたいに扱わないで…自信なくす…」


そう言って泣くのを堪える


「ごめん、そういう意味で言ったんじゃない」


碧くんは「好きだよ」と言いながら私にキスをした


お互いに下着一枚で抱き合って何度もキスをする


気持ちが落ち着いて、碧くんが私から離れて夕食を作り始めた


夕食のあと、私の胃がキャパオーバーで具合が悪くなった


最悪だ


「食べすぎるからだよ」


「出されたら残せないのわかってるくせに」


碧くんと小競り合いをして、碧くんが何も言わずに家を出た


取り残された私はひたすら気持ち悪さと戦う


30分ほどして帰ってきた碧くんは胸ポケットから胃薬を出して私に渡した


「ありがとう」


胃薬を飲んだら食道の当たりがスーッとして幾分マシになった


一時間ほどして、私の実家まで碧くんが車で送ってくれた


「もしもエッチができなくても、それでも俺は茜が好きだから、ゆっくり進めていこう?」


「うん」


「すぐじゃなくていいから俺の親にも会ってほしい」


「うん」


それは早くない?という言葉を飲み込んで返事をした


「うちの親には会わなくていいから、碧くんに私の友達にも会ってほしい」


「うん、そうだね」


実家近くのコンビニに車を停めて、碧くんは私にキスをする


「俺は本気だから、茜を大切にしたいし、結婚したいし、ちゃんとしたい、俺には茜しかいないと思ってるから不安にならないで」


「私も碧くんと結婚したい」


「かわいい、茜大好きだよ」


碧くんがキスをして、私は碧くんに抱きつく


離れたくないけど、明日もまた仕事


「また来週ね」


碧くんにそう言って実家に帰った

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