ちゅ、
運命
社会人生活も一年ほどして落ち着いた二月
出会いは自分で掴みに行くしかないと思った私は、さっそく適当な婚活パーティーに申し込んだ
参加費は500円
男100人、女100人の婚活パーティーで
10人くらいの人と連絡先を交換して
そのうちの一人と二次会に行った
身長177cmでスリムで爽やか系の男性だった
話はおもしろくなく、なんの特徴もなく、この人と付き合いたいと思う人ではなかった
良く言えば「好青年」
悪く言えば「つまらない人」
職業は地方公務員
年齢は31歳
私は23歳
付き合いたい人ではないけど、とにかく経験がほしかった
その人と付き合うことになって、不意に下の名前で呼び捨てにされた時、寒気がした
やっぱり違う、その思いを押し殺して、付き合って2週間後、ホテルへ行った
その人が初めての私は、処女だということを隠して「久しぶりだから」と言い訳した
その人に処女を捧げたと知られたくなかった
その人がうまかったかへただったかはわからない
キスをして、前戯をしても、私は濡れなかった
ゴムをつけて挿入しようとすると痛くて痛くて、何度も「無理」と言った
恥ずかしさで死んでしまいそうだった
「ゴムしてるから滑りが悪いのかも」
そう言って、その人は自分のものからゴムを外してそのまま私に挿入した
さっきよりは深く入った
でもやっぱり痛くて、私の中に何かが入ってる感覚が気持ち悪くて、吐きそうだった
そして万が一にでも妊娠することが怖くて今すぐ抜いてほしかった
どれくらい入ってるのかわからなかった私は「もっと奥まで入れて」と言った
冷めてきた自分の思考を誤魔化すために
「もう全部入ってるよ」
苦笑いしながら言うその人にやはり愛情は感じなかった
何度か突かれても、私の精神はもう限界で、心も身体も冷め切っていた
「もうよくない…?」
早く終わりにしたくてそう言った
射精されるのが怖かった
その人には「痛いから」と言って抜いてもらった
軽くシャワーで流して服を着てホテルを後にした
体の相性が悪いのか、私が初めてだったからなのか、その人が下手だったからなのか、とにかくなんの感動もなかった
こんなもんか、としか思わなかった
駅の改札まで送ってもらって帰路に着く
その翌週もまた、夕方から会ってご飯の後、ローションを買ってからホテルへ行った
ゴムをつけてローションを垂らして挿入する
ローションの量足りなくない?と思ったけど、普通がわからない私はその人に任せた
スムーズに挿入はできたけど、やっぱり気持ち良くない
別に痛いわけでもなくて、淡々とリズムを刻んで気持ち良くなっていくその人と
中で動く感覚を鈍く感じてるだけの私の間に、分厚い壁があるみたいだった
「バックでやりたい」
どうしても嫌で適当に理由をつけて断った
そのまま最後まで達したその人は、私の隣で仰向けになった
疲れて呼吸を整えるその人がとても貧相に見えた
細くて胸板のない身体
萎んで陰毛に隠れてしまった陰茎
大きく広がった陰嚢
なんの面白みもない
「ねぇ、触って」
私に陰茎を触るようねだってくるその人が無性に気持ち悪く思えた
「今度ね」
そう言って私はさっさと服を着た
その後、特に何もなく日々を過ごして4月に入った頃
丸2週間なんのやり取りもなく、なんとなく胸騒ぎがして「今週どこかで会えない?」と連絡した
数時間後、別れの連絡がきた
「ごめん、別れよう。
もう好きと思えなくなりました。」
そのメッセージを見た瞬間、息が止まった
深いため息が出て、嘘でしょと思う
好きだったわけではないけど、これってやり捨てと何が違うの?
相手選びを間違えた自分にショックだった
怒りはないし、別れを告げられたことに落ち込むでもない
でもなんとなく、別れを選ぶのは自分だと、たかを括っていたから悔しかったんだと思う
次の生理は少し遅れた
そこからまた、なんの変化もない日々を過ごす
次参加する婚活は何にしよう、と検索しては申し込み画面まで行って戻るを繰り返した
もう一度申し込んだのは七月