One week or more?

武夫

【第3水曜日】
《時間がある時に食事でもしないか》
 元夫の武夫からのLINE。10回に1回はイエスと返事をするようにしている。そろそろイエスのタイミングかな。
 結婚していた頃は、外食なんて怠け者のすることだ、料理するのは女房の仕事だろ、と家事労働について一切理解しなかったくせに、離婚したらこの有様。これも外ヅラの1つなのだろう。それに騙されて結婚したようなものだ。
《下北沢のサンデイブランチに行きたい》
 と返信すると、OKとだけ返事が来た。
 そのうち待ち合わせ場所と時間を連絡して来るだろう。武夫は待ち合わせの場所と時間を自分で決め、こちらが遅れると不機嫌になる。仕事をしていたら大人の事情でそうそう時間通りに行けないこともあるだろうに。これだもの、友達が居ないわけだ。もしかして新しい女も出来ない? さもありなんと思う麻衣子であった。

「この後予定ある?」
 デザートのケーキを半分食べたところで武夫が口を開いた。女性客ばかりの店内で会話が弾まず、食べたら力の部屋に行こうと思っていた麻衣子は、
「ある」
 とだけ返事をした。
「急がないならホテル行かないか」
 あー、やっぱりそういうことか、女が欲しくなると元妻に手っ取り早く声をかけるわけだ。前回は新宿のタイ料理屋で食事をした後、新大久保のホテルまで歩いたっけ。10回に1回しか許可されなくてさぞかし不自由を感じていることだろう。
「ごめん、予定があるからそれは無理」
 韓国から帰って来る力に掃除した部屋のチェックをしてもらうことになっている。
「そっか、男か」
 それには答えず、あなたは彼女は居ないの?と訊こうとして言葉を引っ込めた。返答を聞いたところで麻衣子にとって何の意味も無い。関心があるのかと勘違いされても困る。
 さっさと家に帰ってママにおかえりなさいと言ってもらいな、と麻衣子は思った。

 小田急線の改札の前で大胆にも麻衣子を抱きしめてキスをした武夫。相変わらずイイ男ぶっている。周囲からどう見えるか計算しての行動に鼻白む思いがする麻衣子であった。
 力の部屋は下北沢駅から徒歩7分。だから麻衣子は電車に乗らない。改札の中に消える武夫を見送って踵を返した。
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