雨の音は、
朝からどんよりとしていた空が、とうとう耐えきれずに地上に雫を落とし始めたのは、昼休みが終わった頃だった。
「うわ、最悪。あたし今日、傘もってない~」
あちこちから同じような声が聞こえてきて、私は密かに苦笑した。
朝からあんなに曇ってて、なんなら昨日の夜や今朝の天気予報でもさんざん『午後から雨が降ります』って言ってたのに、ね。
梅雨入りの宣言はまだだけど、そろそろ梅雨入りしてもおかしくない。
「走って帰る? イケると思う?」
いや無理でしょ、ずぶ濡れになるよ。家に着く頃には、上から下までびしょ濡れでしょ。
「……無理じゃない? 職員室行く?」
「だね。傘、借りよー」
忘れ物として預かっている持ち主不明の傘は、職員室に行ってクラスと名前を貸出票に書き込めば借りることが出来る。
もちろん必ず数日内に返却しなければならないけれど。
バタバタとクラスメイトが教室を出て行くのを見送り、私は窓際の席でひとり、外を眺めていた。
雨粒が次々と空から落ちてきて、地面に水たまりを作り、そこに落ちる雨粒がパタパタと音を立てている。
その音はまるで、音楽のようだ。
空は、悲しいから泣いているのか。それとも、楽しいから音楽を奏でているのか――。
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