雨の音は、

「俺と一緒だったから、濡れたでしょ? ごめんね、ありがとう」

「え、っと、そんなに、濡れてないから、大丈夫」


私がタオルを受け取らずにいると、長瀬くんは私の腕を取って「うそ。だって、こっちの手、濡れてる」と言ってタオルで柔らかく包み込むように私の手を拭いた。


「えっ、あの、長瀬くんっ、大丈夫だから……、」


そんなに濡れていない私の手を、長瀬くんはとても丁寧に拭いてくれた。


「あの、ありがとう」

「仁科さん、それ、俺のセリフだから。傘に入れてくれて、ありがとう」


長瀬くんはそう言って、柔らかく微笑んだ。その笑顔がとても優しくて、私の胸の奥の何かがザワリと動き始める。


「あ、の、えっと、じゃあ、私、帰るね」

「あ、待って仁科さん。口開けて」

「……え?」


踵を返しかけた私に突然かけられた長瀬くんの言葉が理解できず、思わず目を丸くしてしまった。長瀬くんは丸くてピンク色のものを見せながら「お口、あ~ん」と言って手を近づけてくる。


「飴、玉……?」

「うん。だから、口、あけてくれる?」


……ええっ!?

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