ため息のわけを教えてください
「キャンペーン中でまだ配ってますので、どうぞ」
 これを受け取ってくれたら、その勢いのままにネクタイピンも渡すと決めている。ずい、と彼の方に近づける。

「昨日食ったからもういいわ」
 大福さんはバッサリと切り捨てるように言って、背を向ける。

「あのっ」
 声をかけると、彼は面倒くさそうに振り返った。何も言えずに立ち尽くすわたしを一瞥し、大福さんはそのまま店を後にした。

 和菓子派の彼の口に、チョコクッキーは合わなかったのかもしれない。バーコードさんのように、何度ももらおうという発想はなく、多くの人に行き渡らせようとしているだけなのかもしれない。前向きな理由を想像してみるのだが、告白して振られたような気持ちが拭えずに、わたしは落ち込んだ。

 気を取り直すことさえできないまま、煙草の補充をしていると、からあげさんが来店した。いらっしゃいませ、の声から魂が抜けていたのか、彼はどこか心配そうに、わたしの顔を覗いてきた。
 わたしは笑みを取り繕った。
< 10 / 46 >

この作品をシェア

pagetop