ため息のわけを教えてください
「そうですか。やっぱり、義理はちょっとないかなって」
わたしは去り際の、大福さんの顔を思い浮かべていた。
「たしかに、人によっては気を悪くするかもしれないよね。それが大場さんに好意を持っている人だったら『義理』でショックを受けてしまうかもしれないし」
「えっ」
「冗談、冗談。でも、渡すことでお客さんに嫌な思いをさせている、って大場さんが感じるなら、店長に言った方がいいよ。この辺りはコンビニ激戦区で、ちょっとしたことが命取りになるから。何なら、僕が『義理』をもらって怒ってたことにしてもいいし」
彼は名刺をくれた。緒方彰一。からあげさんは、不動産会社に勤めている人だった。取得資格がずらりと並び、営業部長と書かれていた。世の中のほとんど全員がお客さんになり得る業界、というところが共通しているから心を寄せてくれるのだろうか。
「大変だろうけどがんばってね」
からあげさんの優しさに元気をもらって、心が軽くなる。わたしはやりかけにしていた仕事を思いだし、煙草を手に取った。棚に補充を済ませると、今度はカウンターの上にクッキーの入った箱を出した。
わたしは去り際の、大福さんの顔を思い浮かべていた。
「たしかに、人によっては気を悪くするかもしれないよね。それが大場さんに好意を持っている人だったら『義理』でショックを受けてしまうかもしれないし」
「えっ」
「冗談、冗談。でも、渡すことでお客さんに嫌な思いをさせている、って大場さんが感じるなら、店長に言った方がいいよ。この辺りはコンビニ激戦区で、ちょっとしたことが命取りになるから。何なら、僕が『義理』をもらって怒ってたことにしてもいいし」
彼は名刺をくれた。緒方彰一。からあげさんは、不動産会社に勤めている人だった。取得資格がずらりと並び、営業部長と書かれていた。世の中のほとんど全員がお客さんになり得る業界、というところが共通しているから心を寄せてくれるのだろうか。
「大変だろうけどがんばってね」
からあげさんの優しさに元気をもらって、心が軽くなる。わたしはやりかけにしていた仕事を思いだし、煙草を手に取った。棚に補充を済ませると、今度はカウンターの上にクッキーの入った箱を出した。