ため息のわけを教えてください
「あと少しだね。じゃ、元気出してがんばって」
からあげさんは歯を見せて笑い、駅に向かって歩いて行った。昨日様子がおかしかったことを、気にかけ続けてくれていたのだ。それならば、『義理』の被害者、大福さんとの関係を少しでも修復するのが、からあげさんの気持ちに応えることになるはずだ。
店内に戻ると、大福さんはレジで会計をしていた。今日も電子決済だ。口をへの字にし、いらいらしたようすのまま、不慣れな手つきの袋詰めが終わるのを待っている。わたしは小走りでカウンターの中に戻った。
大福さんは、袋詰めにはこだわりがある。臨時バイトと代わって、缶の上に大福をちょこんと載せ直す。彼は眼鏡の奥の目を丸くして、わたしを見ている。
「あの、いつもありがとうございます」
もうクッキーは渡さない。その代わりにお詫びとお礼の気持ちを込めて、いつもよりも深く頭を下げた。
「おう」
声は困惑している。わたしが顔を上げると、大福さんはふいと顔を背けて、足早に去って行く。その歩き方が昨日と違うようには見えないのに、機嫌が悪くなさそうに思えるのは、なぜだろう。
からあげさんは歯を見せて笑い、駅に向かって歩いて行った。昨日様子がおかしかったことを、気にかけ続けてくれていたのだ。それならば、『義理』の被害者、大福さんとの関係を少しでも修復するのが、からあげさんの気持ちに応えることになるはずだ。
店内に戻ると、大福さんはレジで会計をしていた。今日も電子決済だ。口をへの字にし、いらいらしたようすのまま、不慣れな手つきの袋詰めが終わるのを待っている。わたしは小走りでカウンターの中に戻った。
大福さんは、袋詰めにはこだわりがある。臨時バイトと代わって、缶の上に大福をちょこんと載せ直す。彼は眼鏡の奥の目を丸くして、わたしを見ている。
「あの、いつもありがとうございます」
もうクッキーは渡さない。その代わりにお詫びとお礼の気持ちを込めて、いつもよりも深く頭を下げた。
「おう」
声は困惑している。わたしが顔を上げると、大福さんはふいと顔を背けて、足早に去って行く。その歩き方が昨日と違うようには見えないのに、機嫌が悪くなさそうに思えるのは、なぜだろう。