ため息のわけを教えてください
わたしは制服に着替えると、手作りのネクタイピンをハンカチに包んで、ポケットに入れる。憂鬱な気持ちのままドアを開け、店に出た。
レジ下の棚には蓋の切り取られたクッキーの箱が、いくつも積み重ねられている。接客中だった同僚の女性は、商品の袋詰めを終えると、棚からクッキーを一枚取った。
「バレンタインでチョコクッキーを配っているので、ひとつ入れておきますね」二十代半ばの女性客に微笑みかけると「コーヒーのお供にします」と嬉しそうだ。
女性客なら、甘いものが好きな人が多いし、配布しやすそうだ。仕事の合間に外に出る時にも、ほとんどの人が外出用の小さなバッグを持って来ているから、温めたお弁当と一緒になってしまうこともない。
客足が途切れたところで、わたしは彼女とレジを変わった。
「大場さんバックルームの連絡板、見ました? ネットショップで発注しくった分のしわ寄せがうちらとか、あり得なくないですか」
そうだよねえ、と笑顔で流したが彼女の不満は止まらない。
「ダッサいクッキー配る身にもなってほしいですよね。だってあたしがセンスゼロの人みたいじゃないですか。もうちょっと可愛いのあっただろって」
頷きながら聞いていたが、彼女とは不満の種類が随分違っているようだ。
レジ下の棚には蓋の切り取られたクッキーの箱が、いくつも積み重ねられている。接客中だった同僚の女性は、商品の袋詰めを終えると、棚からクッキーを一枚取った。
「バレンタインでチョコクッキーを配っているので、ひとつ入れておきますね」二十代半ばの女性客に微笑みかけると「コーヒーのお供にします」と嬉しそうだ。
女性客なら、甘いものが好きな人が多いし、配布しやすそうだ。仕事の合間に外に出る時にも、ほとんどの人が外出用の小さなバッグを持って来ているから、温めたお弁当と一緒になってしまうこともない。
客足が途切れたところで、わたしは彼女とレジを変わった。
「大場さんバックルームの連絡板、見ました? ネットショップで発注しくった分のしわ寄せがうちらとか、あり得なくないですか」
そうだよねえ、と笑顔で流したが彼女の不満は止まらない。
「ダッサいクッキー配る身にもなってほしいですよね。だってあたしがセンスゼロの人みたいじゃないですか。もうちょっと可愛いのあっただろって」
頷きながら聞いていたが、彼女とは不満の種類が随分違っているようだ。