ため息のわけを教えてください
「まあまあだな」
 大福さんは、ビールでクッキーを喉に押し流した。
「和菓子派ですもんね」
 わたしがフォローを入れると「おう」と目を伏せる。お酒の進み具合を見ていると、酔っているようには思えないが、頬のあたりがほんのりと赤い。


 店の看板が落ちる頃、客たちは別れの挨拶を交わして、会計が済んだ人から帰って行く。
 中華料理屋で義理クッキーの山分けをした流れで、客同士の話が始まって、終電間近になってしまったが、手荷物がなくなったのはよかった。

「間に合うか?」
 大福さんは早足で駅までの道を歩く。わたしはその後ろを、片手を腹部に当てながらついていく。早食いが祟って歩くたびに胃の中がひっくり返っている。

「たぶん、ぎりぎり間に合うかと」
 その声が自分から離れ始めていたことに気がついたのか、大福さんが振り返った。呆れ声混じりのため息を吐き出して、わたしが彼の元に着くのを待っている。

「食い過ぎで歩けねんだろ」
「そんなことないです。あ、終電やばかったら、わたしのことは置いていってください。今日はごちそうさまでした、急に押しかけてしまってすみませんでした」
 別れの挨拶をすると、彼はまたため息を落とす。
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