ため息のわけを教えてください
その瞬間、わたしははっとした。ハートの真ん中に大きく亀裂が入っている。
「ちょっと待ってください。ごめんなさい、こちらでした」
彼の手に渡りかけたクッキーを大慌てで引っ込めて、棚の下から新しいものを取る。あらためて差し出したものに書かれていた文字は『義理』。
カウンターの間の空気が凍り付いた。わざわざ差し替えてこれはまずい。けれどもわたしには、渡そうとしたものを二度も引っ込めることはできなかった。
「おう」
微妙な間を置いてそれだけ言うと、大福さんは袋の中にクッキーを放り込み、店を出て行った。
わたしはその場に、しゃがみ込んだ。捌けたクッキーは案の定、中央から真っ二つに割れていた。
「なんで、いきなり違うメッセージが」
箱の中の在庫を確認すると、ちょうどここから『好きです』の中に『義理』が混在し始めていた。いちばん手前に『好きです』が見えているからと、安心しきってしまっていたわたしが悪い。
ポケットの中で四角く突っ張っている、ネクタイピンを包んだハンカチを取り出した。以前もらった美味しいアオリイカのお礼、という名目で渡そうと、何週間も前から準備を重ねてきたのに、トラブルのせいで渡し損ねてしまった。
「ちょっと待ってください。ごめんなさい、こちらでした」
彼の手に渡りかけたクッキーを大慌てで引っ込めて、棚の下から新しいものを取る。あらためて差し出したものに書かれていた文字は『義理』。
カウンターの間の空気が凍り付いた。わざわざ差し替えてこれはまずい。けれどもわたしには、渡そうとしたものを二度も引っ込めることはできなかった。
「おう」
微妙な間を置いてそれだけ言うと、大福さんは袋の中にクッキーを放り込み、店を出て行った。
わたしはその場に、しゃがみ込んだ。捌けたクッキーは案の定、中央から真っ二つに割れていた。
「なんで、いきなり違うメッセージが」
箱の中の在庫を確認すると、ちょうどここから『好きです』の中に『義理』が混在し始めていた。いちばん手前に『好きです』が見えているからと、安心しきってしまっていたわたしが悪い。
ポケットの中で四角く突っ張っている、ネクタイピンを包んだハンカチを取り出した。以前もらった美味しいアオリイカのお礼、という名目で渡そうと、何週間も前から準備を重ねてきたのに、トラブルのせいで渡し損ねてしまった。