すてきな天使のいる夜に~3rd story~
「そう…だったんだ。」
「沙奈が、背中を押してくれた。
ありがとう、沙奈。」
「ありがとう。」
「私、知らなかった。」
「そりゃそうだよ。初めて話したから。」
2人は、入院の度にお見舞いに来てくれていた。
そんな思いを抱きながら、2人は医者の道を選んでいた事は知らなかった。
2人の話を聞いて、少しだけ心が温かくなったのを感じる。
少しでも、2人の力になれたなら嬉しい。
「よし、今日も頑張るか。」
電車とバスを乗り継いで、2人と一緒に教室へ向かった。
いつものように、ホームルームが始まる。
窓際の1番後ろの席は私の特等席。
たまたま、出席番号の並びでこの席になった。
「それから、七瀬さん。」
窓の外を眺めていると、突然担任の先生から名前を呼ばれた。
「はい。」
「校長先生がお呼びだから、朝のホームルームが終わったら校長室に行ってね。」
「分かりました。」
何だろう?
私、何かしたかな?
怒られるよなことはしてないと思うけど…。
思い当たる節は全くない。
むしろ、出席もあまりしてないし校長先生の顔なんて式の時くらいだから…。
まさか、留年の話とか…?
いやいや、ちゃんと補習も受けていたし…。
とにかく、行ってみないと分からないよね…。
朝のホームルームが終わり、重い足取りで私は校長室へと向かった。
「失礼します…。」
「あ、七瀬さん。お待ちしてました。」
笑顔で校長先生は、部屋の扉を開けてくれた。
「さあさあ、取って食べたりしないから安心して。
そこ、座ってくれる?」
「はい。」
校長先生にソファーに座るよう促され、腰を降ろした。
「この間…と言っても1ヶ月前に模試をやったの覚えてる?」
確か、夏休みが終わってすぐのこと。
「はい。覚えています。」
「これが、七瀬さんの結果です。」
そう言いながら、B5サイズの白い封筒と封を切るためのハサミを私の目の前に差し出した。
渡された封筒の封を切って、中身を取り出し自分の結果を確認する。
「えっ…」
そこには、今までに見たことの無い結果が記されていた。
「驚くよね。」
そこには、全国順位が乗っていてこの模試を受けた人の中で10位以内に入っていた事が記されていた。
しばらく、時が止まったように結果を持ったまま固まっていた。
本当に私の結果?
間違えてるんじゃない?
目を疑い、何度も名前を確認する。
「間違いなく、七瀬さんの結果だよ。
それでね、七瀬さん。
七瀬さんなら、もっと上の大学に進学出来ると思うんだ。
どうして、七瀬さんはこの大学を希望者してるのかなって思って。」
その一言で、校長先生の笑顔は真剣な表情へと変わった。