すてきな天使のいる夜に~3rd story~
「どうして…そんなことを…?」
「一個人としては、七瀬さんの学びたい大学で自分の行きたい場所を選んでほしいと思うんだ。
だけど、この高校の校長先生としてはもっと上を目指してほしいとも思うんだ。
七瀬さんの今の学力なら、もっともっといい大学に入れると思う。
どうして、この大学を選んだんだろうって…。君ならもっと上の大学を目指せるのに。
少しだけ考えてほしい。
大学選びに妥協は良くないよ?」
「やめてください!」
気づいたら、私は声を張って立ち上がっていた。
「七瀬さん?」
「いくら、上の大学に入ったとしてもいい大学とは限らないですよね?
私は、私の希望する大学に進学が出来ないなら進学なんてやめても構いません。
それに…。妥協してこの大学を選んだんじゃない…
私は、ただ医者になりたいわけではないんです。
私の大切な人が通っていた大学で学んで、自分の将来と真剣に向き合っていきたい。
私の生きる道は、私が決めます!」
そんなことで呼び出しなんてしたの?
担任の先生は知っていたの?
先生は、私の選ぶ大学に進学することを応援してくれていたんじゃなかったの?
そもそも、将来に希望を持たせてくれる道筋をたてて導いてくれていたんじゃないの?
だから、私のことを特別進学クラスに入れてくれたんだよね…
なのに…
どうして?
「七瀬さん、落ち着いて。」
「…そんなこと言われて落ち着いていられますか?」
私を、上の大学に勧めてきたこともそうだけど、私の意思は関係なしに紫苑達が学んできた大学を貶されている気がして悔しかった。
私が曖昧な気持ちと、何となくの気持ちでその大学を選んだと思っているの?
私の気持ちが、そんな中途半端に見えたの?
紫苑や翔太の通っていた大学だったから私もその大学を選んだ。
2人だけでなく、大翔先生も通っていたって聞いたから。
私の尊敬する3人と、同じ環境で同じ景色を見て医者になりたいと思っているのに。
「七瀬さん?」
「失礼しました。」
まだ、何かを続けようとしていた校長先生の話を遮って、私は校長室から飛び出していた。