オスの家政夫、拾いました。1. 洗濯の変態編

「久しぶり。元気そうでなによりだね」


彩響の挨拶に、元彼が鼻で笑う。そう、彼も出版社で働いている人で、ここにいてもなに一つおかしくないはず…だ。彩響が姿勢を整えると、武宏が嫌みを言って来た。


「へ、お前も相変わらずのようだな。まだあのゴミ屋敷に住んでいるのか？」

「余計なお世話だね。人がゴミ屋敷に住んでいようが宮殿に住んでいようが、もうあなたには関係のない事じゃない？」

「昔の情を考えて助言してるだけだぞ。お前、マジでそのままだと誰も嫁に貰ってくれねえからな。あ、でももう無理かも。お前もう３０だろ？３０超えた女なんか、誰も欲しがらないわ」


べらべらとやつが暴言を並べる。あれは付き合っていたときもずっと言われていた言葉だ。頭の中で、昔やつに聞いた様々な言葉がガンガンと響く。


――「女の年はクリスマスケーキなんだよ。２４にめっちゃ売れて、２５には結構売れて、２６になると誰にも相手されなくなるんだぞ。お前はもう廃品だけど俺が拾ってやるよ。俺に感謝しろよな！」

――「お前、母子家庭育ちだろ？だからそんな気が強いのかよ。まあ、俺くらいの男だから結婚してあげようと思うんだ。ありがたく思えよ。」



「あれー？たけひろさん、そのひとは？」

二人の間に一人の女性が入ってきた。見た感じ、どうやらこいつの新しい彼女らしい。とてもふわふわした印象で、喋り方も振る舞いも柔らかい。まさにこいつがずっと言ってきた「女性らしい女性」だ。

「あ、こいつ？気にしなくていいよ。ひろみちゃんはなんか食べた？」

「ううん、ひろみ、おなかペコペコなの。なんかいっしょにたべにいこう？」

（うわ、自分のこと名前で呼ぶタイプですか…）

武宏は横目でちらっと彩響を見て、そのまま彼女と腕を組んで離れて行った。彼らがどこかのグループに交じるのを確認して、彩響はガブガブと持っていたドリンクを飲む。今日うまくいったのはドレスの選抜だけで、それ以外はなに一つ気に入らないこの状況。イライラしてたまらない。

（そもそも…私はなんであんなやつと付き合ったの？本当にあんなやつと結婚までするつもりだったの？？）