オスの家政夫、拾いました。1. 洗濯の変態編
大学卒業して、その当時最も給料がいい会社を選び入社した。一緒に入社した同期が次々と辞表を出す中、死ぬほどあがいて生き残ったら、今度は結婚の圧迫が入った。学生の頃は少しでも男に興味を持つと、死ぬほど怒っていた母は、27になると今度はなにか言う度に「結婚結婚」と言い始めた。丁度そのときアタックしてきたのがあのクソ野郎で...最初は優しかったからそのまま付き合って、自然と結婚までの準備に迫り…

「…私って、本当なんの面白みもない人生送ってるね」

ぼそっと独り言を言うと、なんか気持ちが沈んで息苦しくなってきた。セクハラする編集長も、女らしさうんぬんうるさい元彼も。これ以上同じ空間にいると気が狂いそうで、彩響は入り口の方へ急いだ。広い会場を抜け、やっとロビーに出たその瞬間…

「――あ!」

誰かと強くぶつかり、そしてすぐ胸とお腹の部分がなにかで濡れるのを感じた。すぐには状況を把握できず、ぼーっとしていると慌てた相手の声が聞こえた。

「も、申し訳ございません、お客さま!お怪我はございませんか?!」

(え…?)

「今すぐなにか拭くものを用意いたします!本当に申し訳ございません!」

アルコールの匂いが鼻を刺激する。あ、そうか。これはワインか。とてもいい香りの、赤ワイン…。彩響の口から笑い声が漏れ出した。

あーもうダメだ。このパーティは終了だ。

「…で、終わるもんかー!」

何回も謝るウェイターを無視して、彩響はそのままエレベータへ走った。7階で降り、このパーティが遅くなるのを想定してとっておいた部屋の鍵を開ける。そのまま浴室に入り、ドレス殺人、いやドレス殺服事件の痕跡を必死で洗い流した。だが…

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