性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。
優しい瞳でフッと笑みを浮かべる彼の表情に
『あー…う、うん…』と緊張した返事しか出て来ない。
”気を付けて行ってきて”
ただの挨拶なんだろうけど
この人が言うと妙な意味で聞こえるのは
私だけだろうか…―――――
気まずさしかない中
あとの事は氷彗にお願いし
私は部屋に戻って出掛ける支度を始めた。
いくら考えても
どこに行くのか何をするのか
さっぱり検討もつかないままだけど…。
「遅い。」
すでに車の外で電子タバコを吸いながら
携帯を弄っていた壱琉に怒られた。
って、いやいや。
逆にアンタが早すぎなんだって。
どうしてさっきまで裸だったヤツが
しっかり髪までセットしてんのさ。
「乗れ」
「…はい」
多々文句を言いたいところだけど
その衝動を抑え、大人しく助手席に乗り込んだ。
そういえばコイツの車に乗り込むのは
ここに来た初日と今日の2回だけ。
それも前回はスーツ姿だったけど
今日はジーンズにシャツと、わりとラフな服装。
捲った袖から出る腕の筋肉感が
女性にはキュンポイントなんだろうなと
ハンドルを握る彼の腕を見ながら思ってしまった事は、悔しいから黙っておこ。
車を出発させてから数分
ようやく本人の口から今日の目的の発表があった。
「これからアンタを
俺の家族に紹介する」
「は、はいぃぃッ!?」