性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。

せっかく忘れかけていたのに
コイツに思い出させられて
しかも弱みを握られているんだから余計に腹が立つ。

気が立っているせいか
頭から湯気でも出るんじゃないかってくらい
顔が沸騰するように熱くなる。

「詩菜…」

急に名前を呼ばれ
かと思えば自分のシートベルトを外し出す壱琉。

すると突然、何をするのかと思えば
縛りがなくなって自由になった体をこちらに向け
私の座椅子の端に手を付き、顔を近付けてくるではないか。

「ちょちょちょちょッッッ!!?」

脳内大パニック。

慌てて離れようにも
シートベルトを着用したままであり
更には”車内”という狭い空間。
すぐに逃げられるはずがない。

スッと伸びてくる壱琉の手に
このままこんなところでコイツに襲われるんだって考えたら、どうして良いかわからなくなってしまい、ギュッと目を閉じ体を硬直させた。

けれど
彼が触れたのは、私の・・・額。

「…へ?」

ゆっくりと目を開けると
壱琉は真剣な表情で私の額に手を当てて
体温を測っている。

「少し熱い、か…?
 熱なのかはよくわかんねぇけど」

そう言って手を額から離し
私に近付いていた顔も離れていく。

「えっ…と…」

驚いて瞬きを数回
唖然としてしまう。

「キスされるとでも思ったか?」

またニヤリと
悪魔の微笑みが返ってくる。

 
 

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