性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。

まずい!
こんなの勘違いされるッ

「放してよ…ッ」

強引に押し戻そうとすると
今度は案外すんなりと体を離してくれた。

どうしていきなり?

呆気に取られている私に壱琉は。

「華恋の事は俺の問題でもあるから。
 余計な指図は必要ねーよ」

「でもッ」

「この件に関わるな。
 詩菜を…巻き込みたくはない」

「え…」

小さくボソッと呟いたかと思うと
そのまま氷彗の方へと歩いていってしまった。


”俺の問題だから”

”詩菜を巻き込みたくはない”

その言い方は、まさか壱琉
彼女のこと何かわかっている…?
だから私に忠告を…?

「壱琉…」

彼の後ろ姿に不安を募らせていると
複雑な表情の氷彗と目が合ってしまう。


何か言いたそうなのは目でわかる。
たぶん今壱琉にされていたこと…
されそうになっていたことだと思う。

氷彗の気持ちを知っているからこそ
言い訳なんて出来ない。

「氷彗ッ、あのねーーー」

「俺は何も見てない」

「え…」

「見てないよ…」

すでに悟ったみたいで
私が尋ねる前に答えられてしまった。
明らかに見ていたはずなのに
何もなかった事にするなんて
これはこれで気まずい…。


月曜の朝、早々に
出張でも行くかのように、大きなキャリーバッグを部屋から運び出している壱琉。

「しばらく泊まるから
 (ここ)には帰らねーよ」
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