性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。
2週間は経った頃。
夜9時をまわっていた時刻に
壱琉が家に帰ってきた。
…とは言っても
私はちょうどその時間にお風呂に入っていたから
帰ってきたところを直接見たわけじゃなくて
リビングから聞こえてきた氷彗との会話の声で知ったってだけ。
帰ってきたなら声でも掛けようかな
ついでに彼女とのことを冷やかそうかなって頭に浮かんだ悪戯心。
けれど、氷彗と2人だけで話をするなんて今までだってあんまり見掛けなかった光景だから私は入室するのを控え、とりあえずドア越しから様子を静かに覗くだけにした。
スーツのネクタイを緩めながら『あー疲れたな…』とソファにドサッと脱力する壱琉に、氷彗が『お疲れ』って言いながらコーヒーを淹れて持っていく姿は、なんとも仲睦まじい夫婦みたいに映る。
だけど『ところでどうだったの?ストーカー事件は』と切り出した氷彗の一言で一変。
コーヒーに舌鼓を打ちながらくつろいでいた壱琉の表情は険しい顔つきへと変わり、ソファを座り直して本題へと入る。
「《《それらしい》》男かわかんねーけど
華恋のマンションの駐車場で
部屋の方を見ていた怪しい人物がいたのは確認した。
だけど他に何かするわけでもないし
アイツにコンタクトを取ろうとしている様子もないから
ハッキリとした証拠になるものが見つからねぇ」