性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。

結局、氷彗(かれ)についてわかった事は
・月影さんの幼馴染
・お金持ちの息子
・自他ともに興味を示さない

謎多きドライ男だって事のみ。
情報が少なすぎる上、下手に口を出せない。

それでも
頼み事をしないといけないわけでーーーー


「お願いします。
 (丘を)降りた街まで送ってほしいんです!」

リビングで本を読んでいる氷彗に
すがる思いで手を合わせ
懇願したのは昼過ぎの出来事。

食事・掃除の仕事と引き換えにここにいるのに
さっそく食材の買い出しに行けない事実を知り
途方に暮れたのだ。

「…どうして俺が。
 アイツに頼みなよ。
 ここの家主は壱琉なんだから。」

読書中を邪魔された事が気に入らないのか
それとも、ただただ気に入らないのか
心底イヤそうに、迷惑そうに目を細め
“無”ではない感情が表れている。
それほど拒絶したいか。

「あの人にも言ってみたんだけど…」

数分前、自身の車に乗り込み
どこかに出掛けようとするアイツに
同じように頼んでみたもののーーー

『はぁ?んなこと知るか。
 こっちは仕事なんだよ』

と、清々しいほどの無責任な言いっぷりで
早々と車を走らせて行ったのだ。

わかっていたさ。
あんな薄情な最低男に頼んだ私が間違っているって事くらい。

氷彗ならきっと
アイツと違って首を縦に振ってくれる…はず。
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