性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。
「…わかったよ。
送って、迎えに行くだけだから」
「ありがとう!
本当助かるッ」
ほら、この人には優しさがある。
仕方なさそうにしているけど
実はイイヤツなんだって私はわかっていたよ。
氷彗は読み途中の小説をテーブルに置くと
自室に車の鍵を取りに行き
その間に私は買い物リストをメモしながら
財布の残金を確認。
・・・所持金1,000円。
「氷彗さん…
ついでにATMも寄ってもらえません?」
彼が所有しているコンパクトカーに乗り込み
シートベルトをしながら申し訳なさげにお願いしてみると、溜め息を吐きながらも承諾してくれる。
さすがだよ、氷彗。
運転も穏やかで安全。
性格そのままが現れているように思う。
「ここって風が気持ちいいね。
梅雨の時期なのに空気が澄んでる」
少し開いてる窓の隙間から入ってくる風に
心地良さを感じながら話し掛けてみるけれど…
「…。」
会話の相手は応えてはくれない。
真剣に運転…は、とても良いことよ。
それはそうよ、うん。
けれど無音・無言で車内の2人きりは
どうにも息が詰まる。
本当に余計な話は何もしないんだから。
しばらく車を走らせると
人気が増えていき繁華街へと向かってくれる。
着いた先は
喧騒としたショッピング街。
まさに“シティ”
ここに来たのは初めて。