性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。
確かこの名前ってーーーー
半信半疑ながらも振り返ると
彼は挨拶もせず来客用の椅子に横座りで腰掛け
ビジネスバッグから書類の入ったファイルを取り出し、テーブルに広げている。
店長は店長で、探しものが見つからないのか
慌てた様子で奥の部屋に戻っていってしまった。
月影って
私が住んでるアパートの大家のはず。
ダークブラウンの襟足長めのルードスタイルで
目は切長で奥二重。
ぱっと見、まるでホストみたいな男。
実際のホストは見た事ないが…。
もしこの男が本人なら
年寄りだって聞いてるけど
全然若いじゃん。
私があまりにジーッと凝視していたから
男は視線を感じたのだろう。
背もたれに頬杖ついて
こちらを見ながら億劫そうに言葉を発する。
「さっきから何」
“目は口ほどに物を言う”とは、この事なのか。
『こっち見てんじゃねーよ』が伝わってくる。
声を掛けられたならチャンス。
直談判あるのみ。
「貴方が大家の月影さん?」
外に出るのをやめ
躊躇なく男が座る席に近付き
今度は私が見下ろしてやった。
「なに。逆ナン?」
目を細め『はっ』と鼻で嘲笑われたけど
負けてはいられない。
「冗談じゃない。違います。
私が住んでるアパートの立ち退き通知が送られてきたので、今後についてお聞きしたいんです」