性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。

それを見て
こっちもハッと思い出し急いで弁解。

「こ、ここは月影宅で間違っていないですよ!」

と。

初日に私がここへ来た時も
何も知らされていなかったのに氷彗を見て
『誰、こいつ』と思ったのと
今まさに同じ状況だから。

「あぁ、そうでしたか。
 失礼しました」

不審者の誤解が解けたらしく
会釈しながら謝罪する姿は丁寧だ。

「このような時間に申し訳ございません。
 氷彗は帰宅しておりますか?」

「えっと…貴方は彼の…」

「あぁ、失礼。
 申し遅れました。(わたくし)は氷彗の父です」

また丁寧にも頭を下げるものだから
こっちが恐縮してしまう。

でもやっぱり氷彗の父親で間違いはなかった。
本人を目の前にすると確かに目元が似ているようにも見える。
だけど今朝の一瞬で、それも顔を見なかったのに
どうしてこの人が父親だとわかったんだろう。
特別な”何か”が似ているのかな。

それにしてもこの人の()からは
人としての感情ってものをまるで感じない。
その割に佇まいや雰囲気からは隙がなっく殺気さえ感じる。

挨拶しかしていないのに
全身が凍り付くような緊張感。
さすが大病院の”長”

「それで氷彗は…」

「あ…」

圧倒されて自分の世界に入り込んでいた私に
氷彗の父からの言葉で我に返った。
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