性悪なヤツらの取り扱い方を教えてください。
けれどこの場の沈静化が先。
視線を無視して
私は氷彗の父親に軽く頭を下げて断った。
「すみませんが
時間も遅くなりますので
今日はお引き取りをお願いします」
言われた氷彗の父親は
腕時計を見たかと思うと時間に納得したらしく
『やれやれ』と首を横に振った。
「この続きはまた今度だ。
いいか氷彗、これは絶対だからな。
お前に拒否権はない」
最後まで喧嘩腰な物言いで罵倒。
氷彗とすれ違い様に更に呟いた。
「女に助けてもらうなんて情けない」
私の耳まで届いた蔑んだ言葉に
こっちまでカチンときたけど、我慢だ我慢。
言い返したい気持ちが喉元まで出かかって
グッと飲み込んだ。
氷彗に申し訳ないから。
父親が、家から離れた先に停めていた黒いセダン車に乗り込み去っていくと、氷彗も家に入ろうとこちらへ歩いてきた。
「氷彗…」
「…」
声を掛けてみるけど私と目を合わせる事なく
不機嫌極まりない顔で
そのまま2階へと行ってしまった。
あー…
これは良くない前兆かもな。
それでなくても氷彗は口数は少ないし心も開かないのに、これじゃ余計に殻に籠ってしまう。
連れ戻したところで
あの親子が上手くいくとは到底思えない…。
その後、やはり氷彗の様子はおかしかった。
必要以上に部屋から出ず
私はともかく、壱琉にすら顔を合わせない。