悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています！
恐る恐る振り返ると、漆黒のフードマントをかぶった長身の男が背後に立っていた。

男が手でフードを振り払うと、神々しい輝きを放つ銀色の三角耳が姿を現す。

鋭い金の瞳が、射貫くようにこちらに向けられていた。

それは、間違いなくリシュタルトだった。

「皇帝陛下だ……！」

「嘘だろ！？　どうしてこんなところにいるんだ」

とたんに、ひっくり返りそうな勢いでざわつく周囲。

「お父様……」

ナタリアが思わずそう漏らすと、ざわめきはより膨れ上がった。

「皇帝陛下がお父様ってどういうことだ？」

「ベルは一体何者なんだよ？」

そんな中、リシュタルトがゆっくりとナタリアに近づいてくる。

「このところお前の様子がおかしいから、あとをつけたんだ。部下にあとをつけさせても、お前の協力者にもうまく撒かれてしまうようだからな」

リシュタルトが、凍てつくような視線でギルを睨む。

絶体絶命のピンチだというのに、ギルは涼しい顔をしていた。

「お前はこの国の王女だ、気安く出歩いていい立場ではない。いつどこで命を狙われるか分からないんだぞ、それを分かっているのか？」

ナタリアを見下ろすリシュタルトの目は、刃のように鋭く冷たい。

彼のこんな表情を見るのは久しぶりだった。

初めて目が合った日、赤ん坊のナタリアを食い入るように見ていたあの表情に似ている。
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