悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
ギルを睨みつけるリシュタルトの瞳が、朱に染まっていく。

それはナタリアが以前見た、獰猛化したドラドの目にそっくりで――。

(お父様、獰猛化の兆しが出ているわ……!)

焦ったナタリアは、必死にリシュタルトの腕にしがみついた。

「ギルは悪くないんです……! 私がお願いしたから協力してくれただけなの……!」

「協力も立派な犯罪だ。お前も、俺の娘を無断で連れ出すのがどれほど罪なことかぐらい分かっているだろう?」

リシュタルトから放たれる殺気に恐れおののき、周囲は死んだように静まり返っている。

一方のギルは、殺されかけているというのに、動揺ひとつ見せずに平然とした顔をしていた。

(そんな、私のせいでギルが殺されるかもしれないなんて……! でも、お父様ならやりかねないわ……)

ナタリアの母を容赦なく処刑し、罪のない弟をも執拗に探して殺害しようとしている彼なら。

ナタリアは我を忘れ、声を張り上げた。

「獣操師の仕事について、話を聞いていたんです!」

リシュタルトが、ギルの胸元をつかんでいた手を離し、ナタリアに目を向けた。
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