悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
ナタリアは目に涙を浮かべながら、必死に声を出した。

「私はお父様やお兄様と違って、ただの人間です。獣化も出来ないし、いざってときにはなんの役にも立ちません。このままはいやなんです。私だって、力を付けたいんです」

二年前、ユキの母親を目の前で殺されたあのとき、ナタリアは自分の無力さを思い知った。

獣操師になりたいと思ったのは、最初は手に職をつけるためだったが、今は自分の運命のように思っている。

もしも獣操師になれれば、自分を守れるだけではない。

不当な扱いを受けている獣たちだって守ってやれる。

そしてユキのようなみなしごを生み出さずにすむのだ。

ナタリアを黙って見つめているリシュタルトの目は、いまだ赤みを帯びたままだった。

ナタリアはそんな彼から目を逸らさないよう、懸命に歯を食いしばった。

なにをふざけたことをと一蹴され、城に連れ戻されるのを覚悟していた。

(ああ、もう終わりだわ……)

生まれついて高貴な血を持ち、頭脳明晰で類まれなる力を持つリシュタルトには、ナタリアのようなちっぽけな人間の気持ちが分かるはずなどないだろう。
 
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