悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
そのとき。

「ハハハハハ!」

張り詰めた空気の中に、場違いなほどの豪快な笑い声が響き渡った。

葡萄酒をあおりながら、イサクがさも面白そうに笑っている。

「相変わらずだな! リシュタルト!」

「――イサク。お前、いたのか」

「おいおい、今まで気づかなかったのか? 戦場では百戦錬磨と恐れられた男が、隙だらけじゃないか! それほど娘にべた惚れってわけか」

「うるさい、黙れ」

(え、どういうこと……?)

まるで昔なじみであるかのようなリシュタルトとイサクの会話に、ナタリアはついていけない。

きょとんとしている間にも、ナタリアとギルのことはいったん保留にされ、会話が進んでいく。

「――お前、南に戻っていたのか。北に移り住んだと聞いていたが」

「北で武勇伝を重ねるのも飽きちまってね。南に遊びに来たんだよ。そしたら面白いお嬢ちゃんに出会ってな。お前の娘だったなんて驚きだよ」

「……その、お父様とイサクおじさんは知り合いなの?」

我慢できず、ナタリアはついに聞いてみた。

怒り心頭のリシュタルトは怖いので、イサクに向かってである。

「城で働いていたことがあると言っただろ? こいつとは若い頃からの間柄さ」

イサクが、ナタリアに向かって肩をすくめて見せた。
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