悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
「ええ、もちろん。ただひとつ、不満はありますけどね」

「不満? ああ、ユキのこと? ユキと離れるのはつらいけど、このまま城に置いていくつもりよ。連れて行くとどうしても目立ってしまうし、お父様ならユキを大事にしてくださるのが分かっているから」

「ユキのことではございません。私は連れて行ってくださらないのですか?」

「え?」

予想外の話に、ナタリアはきょとんとする。

「当り前じゃない。もう王女ではない私と行っても、あなたには何の利益もないでしょ? 家庭教師のお給料も払えないし」

「私は、ずっとあなたのお傍にいると言ったではないですか」

「たしかに言ったけど――」

それは、城の中限定の話だと思っていた。

だがナタリアを見つめるギルの目は真剣そのもので、だんだん焦りを感じてくる。

「本気で言ってるの?」

「もちろんです」

「たしかにあなたに来てもらったら助かるけど」

とはいえ、ギルの目的が分からない。

レオンの入れ知恵で、彼をロリコン呼ばわりしてからかったことはあるが、まさか本気で少女であるナタリアに恋愛感情など抱いているわけがないと思っている。

それにそもそも、道を歩けば娘たちが振り返るほどの美男で、知己にも長けている彼が、どうして家庭教師などという職に就いているのかも理解できない。

彼なら、もっと高い役職に就けそうなのに。
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