悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています！

驚いたナタリアは瞼を開ける。

自分の体が宙に浮いて、芝生の上を駆け抜けていた。

首のあたりに感じる、力強い息遣い。

視界の隅で揺れる、神々しい銀色の毛。

銀色の狼がナタリアのドレスの首根っこをつかみ、迫りくる車両からぐんぐん離れていた。

充分に距離を保ったところで、木陰にそっと降ろされる。

ほぼ同時に積み荷を積んだ車両が目の前の大木にぶつかり、バキバキというすさまじい破壊音をたてながら崩れる。

崩壊した車から落ちたドラム缶が、ドスンという音とともに次々と地面に落下した。

見上げると、狼の月色の瞳と目が合った。

吸い込まれそうなほど美しい瞳。

有無を言わさぬ力強さと、見ているだけで身がすくむようなカリスマオーラを秘めている。

この目を、ナタリアは見たことがある。

「おとうさま……」

銀色の三角耳がピクリと反応する。

思った通り、この狼は獣化したリシュタルトだったのだ。