悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
リシュタルトはものの十分ほど、そうやってナタリアの小さな体を抱き上げていた。

ドクンドクンというせわしない彼の心臓の音が、胸から伝わる。落ち着かないのか、パタパタとしきりに動く彼の尻尾が目に入った。

(もしかして、緊張していらっしゃるのかしら……?)

泣く子も黙る冷徹皇帝が、子供の抱っこごときに狼狽えているのかと思うと、なんだかかわいく思えてきた。

「ふふ」

「どうした? 何がおかしい?」

「お父さまの尻尾が、振り子みたいで面白いと思ったのです」

「……こんなのがおかしいのか?」

「はい」

ナタリアはにこっと微笑むと、彼の胸に頬を寄せた。

リシュタルトは拒むことなくナタリアの好きにさせ、落としてしまわないように気を使っているのか、抱く腕に力を込めてくれた。
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