悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
その日の夜。

いつもと同じ時間に、リシュタルトがナタリアの部屋に来た。

ナタリアが本宮に移ってからというもの、毎夜必ず同じ時間にリシュタルトはナタリアの部屋を訪れるようになっていた。

他愛ない会話をし、ナタリアが笑顔を見せると、満足したように部屋に帰っていく。

会話のぎこちなさも、日を経るに従い少しずつマシになってはいた。

「おとうさま……!」

ナタリアは、リシュタルトが部屋に入ってくるなり、飛び掛かるようにして彼に抱き着いた。

リシュタルトは面食らった顔をしつつも、ナタリアを抱き上げ胸に軽々と抱く。

ぐんと近づいた父の端正な顔。

「たくさんのプレゼント、ありがとうございます」

「ああ、気に入ったか」

「はい、とっても!」

「そうか」

言葉ではそっけなくとも、彼はいつになく愉しげだった。

いつもは怜悧な光を放っている月色の瞳が、どことなく優しい。

それから彼は、どこか決まりが悪そうにボソリとつぶやいた。

「遅くなってすまない。三年分まとめることになってしまい、後悔している。俺はバカだったんだ」

「お父さま……」

生まれてからおよそ三年間ナタリアを避け続けていたことに、リシュタルトが初めて言及する。

なんとなくそのことは禁句だと思っていたので、彼が自ら口にしたことにナタリアは驚いた。

だが、今がチャンスかもしれない。

ナタリアは、どうしてリシュタルトが自分をここまで気に入ってくれたのか、いまだよく分かっていなかった。

臆病なところを見せて、失敗したはずなのに。

今後のためにも、できれば理由を知っておきたい。

「お父さま。お父さまは、どうして急にやさしくなられたのですか?」

幼女だからこそ許されるであろうド直球な質問を、無邪気に投げかけてみる。

するとリシュタルトはナタリアを抱いたまま、ベッドに腰掛ける。

そして自分と向き合うようにして、ナタリアを膝の上に座らせた。
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