溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「じゃあ、その時食事でもしながら話そう。美久はいい加減にもう寝ろ」
維心さんの口調には、親しい相手と話す時のぞんざいな雰囲気と、優しさが滲んでいた。
しかも、彼女と食事をする約束をしたようだ。わざわざ遠く離れた、博多の地で。
「ああ、おやすみ。またな」
彼がスマホを耳から離した瞬間、私は音を立てないようにドアを閉め、そっと自室に戻った。
ベッドに倒れ込み、今しがた聞いたばかりの維心さんの優しい声に、目頭を熱くする。
維心さんは、博多で美久さんという女性と会い、食事をする。話し方から察するに、仕事関係の人ではなさそうだ。
……そして、こんな真夜中に電話をしなければならない相手。
浮気、というふた文字が脳裏をかすめ、けれどその言葉は適当でないと思い直す。
そもそも本気で愛されていない私が、浮気だと騒ぐのはお門違いだ。むしろ美久さんの方が本気かもしれない。
私なんて差し出す体がなければ同じベッドにも寝かせてもらえない、哀れな名ばかりの妻なのだから。