溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「わかった。椅子を持ってくるから、少し待って」
維心さんはそっと私の手を解き、部屋の隅のナチュラルな木製デスクの前に置かれた椅子をベッドのすぐ傍らに運んだ。
そこに腰を下ろして私の手を取ると、布団の上でギュッと握る。
「これで心細くないか?」
凛々しいアーモンドアイを穏やかに細め、維心さんが微笑む。自分で望んだことだけれど、想像以上にうれしくて胸が詰まって、私はなにも言わずにこくりと頷いた。
起こしていた体をのそのそ動かしてベッドの中に戻し、維心さんの手を握ったまま目を閉じる。
病気が治っても、維心さんの態度がこのままだったらいいのにな。こんな幸せを知ってしまったら、体だけを求められる元の生活に戻るのが怖い。
いっそ、このまま熱が下がらなければ――。
不毛な思考が波のようにいったりきたりして、十分ほど経った頃だろうか。徐々に意識を失いかけていた中で、私の手を握る維心さんの手に微かな力がこもった。
なんだろう、と思っているうちに衣擦れの音がして、閉じているまぶたの向こうが暗くなる。