溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
不安定な心
滝のそばは市街地よりもさらに涼しく、薄手の長袖しか着ていなかった私に、維心さんは自分の上着を貸してくれた。
彼の優しさと、上着の温もり、襟元から漂う愛しい香りに包まれていると、ますます私の覚悟は強くなった。滝の水滴を含む、ひんやりとした空気を吸い込んでも、胸の熱さは消えない
今夜、維心さんに告白する。それはもう決定事項になりつつあった。
そればかりに気を取られていたので、夕食を取るために立ち寄ったレストランのジビエ料理の味はよく覚えていない。
それでも帰りの車では『美味しかったですね』と話を合わせ、明日の朝食の買い物をしてから午後九時ごろ別荘に帰ってきた。
告白のタイミングは、シャワーを浴びて寝る前がいいかな。
そんな算段をしながら、寝室に置いてあるキャリーケースから着替えや化粧道具などを取り出していたその時、ドアがノックされた。
「悠里、入るぞ」
「はい、どうぞ」
そう言って、ドアから入って来た維心さんを振り返る。彼はゆっくり近づいてきて、私の手元を覗いて言う。
「風呂の準備はまだ早いぞ」
「えっ?」