溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
不安が芽を出しそうになると、私は慌てて踏みつぶして心のざわめきをなだめ、維心さんに笑いかけた。
その繰り返しで頬の筋肉が疲れ果てたらしい。帰宅して洗面所で手を洗っていたら、鏡に映る自分がなんだか強張った顔をしていた。
せっかく維心さんが帰ってきたっていうのに、こんな不細工な顔じゃ困る……。
私は鏡の前で頬の肉をつまんだり押したり、色々なマッサージで解そうと試みる。
するとその途中で未だスーツ姿の維心さんがドアから入ってきて、頬を両側に引っ張って伸ばしている私と鏡の中で目が合う。
彼は瞠目して固まり、鏡の中の私は真っ赤になった。
「ひとりでにらめっこでもしてるのか?」
怪訝そうに眉根を寄せた彼が大真面目に聞いてきて、羞恥の度合いがまた一気に上がる。
「違うんです! マッサージしていただけで、別に自分の変顔を眺めていたわけでは!」
「なんだ、そうか。悠里はたまに予想外の行動を取るから、なにか俺の思いつかないような遊びでもしているのかと」
「だからって、ひとりでにらめっこなんてしませんよ、もう……!」
思わず握った拳で彼の胸を叩こうとしたら、手首をガシッと掴まれた。
見上げた先の彼は真剣な目をしていて、空気が一瞬にして甘く濃密な気配を帯びる。