溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
遠回りの愛が実るとき
「悠里、聞いているか?」
「えっ……?」
「その顔は、聞いていなかったようだな」
維心さんが、呆れたように苦笑する。
我に返ると、自宅で彼と夕食を囲んでいる最中だった。
彼のスーツのポケットから避妊具を見つけて数日、私はまだ維心さんになにも聞けずにいた。避妊具は、自分の部屋にこっそり保管してある。
そんなものまで見つかったのだから、本来なら維心さんとは距離を置くべきなのだと思う。
佳代の家に逃げ込んで、絶望的なショックや悲しみを、全部ぶちまけるべきなんだと思う。
だけど、維心さんがあまりにもいつも通りに結婚生活を送るものだから、私はそれを手放すのが惜しくなってしまった。
本質から目を逸らして、かりそめの幸福に酔っているだけだとわかっているのに……これじゃ、佳代のいうところの〝不倫女〟そのものだ。
「博多の件をはじめとする西日本の都市開発について、父から全面的に任されたんだ。だから、これから少し出張が増えると思う。留守にすることが多くなるが、大丈夫か?」
「はい、私なら平気です」