溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
一つひとつを思い起こすたび、そのとき維心さんからもらった感情の揺れまでが蘇り、胸がジン、と熱を持つ。
それは、私が彼に恋しているから……本当に、それだけ?
私はもしかして、重大なことを見落としていたのではないだろうか。
自分ばかりが彼を好きなのだと思い込んで、彼の口から出る『子作り』という言葉に、いったいどんな思いが溶けているのか、今まで知ろうともしなかった。
でも、もしかしたら……。
「その顔。なんか思い出したな」
元木くんが、したり顔で私の顔を覗く。
まだ、この考えが正しいと決まったわけじゃない。
それでも自分の思い込みに固執して、硬い殻の中で臆病に震えてばかりいたの自分の殻が、今ようやく脱げそうな気がする。
「ありがとう、元木くん。私、今度こそちゃんと彼とぶつかってみる」
「やっといつもの元気が戻ったな。それでこそ、俺の惚れた女。……あ、ちなみに、俺に対して負い目とか感じる必要ないからな。早坂が一番好きな相手と幸せになるのがいいに決まってる。それを見届けたら、俺も次の恋、ガツガツ探すからさ」
元木くんはにかっと歯を見せて笑い、拳で軽く私の肩を押した。
「うん。応援するね、その時は」
強くて優しいあなたなら、絶対にいい人を見つけて幸せになれる。
私も維心さんのために、お腹の子のために、もっと強く、優しくなりたい。ううん、なる。絶対。
胸の内で決意表明をしながら、頭上の青空を仰ぐ。私たち、今はすれ違っているけれど、きっと大丈夫。
この広い空みたいに、私たちの想いもきっと繋がっているって、信じてるから。