溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
元木くんとともに中に入り、彼の先導でソファ席の一角に腰を下ろす。注文を取りに来たスタッフに飲み物を頼むと、向かいに座る元木くんがさりげなく自分の背後を指さした。
彼の指先を視線で辿っていき、私は見慣れた後ろ姿を見つける。少し離れた場所で私たちと同じようにソファ席に座っている、維心さん。そして彼の対面に、女の人が見えた。
本当に、いた……。女の人は、維心さんより若く私よりは年上といった感じ。ストレートのボブヘアがよく似合う、ナチュラルな美人だ。
あれが美久さん……? それとも、誰か別の人?
距離があるので、なにを話しているのかは聞こえない。じれったく思っているうちに胃の辺りがむかむかしてきて、気分が悪くなってきた。
なにか口に入れたい。注文した飲み物はまだだろうか。
しばらく耐えていたけれど、そのうち我慢ができなくなり、私はハンカチで口元を押さえて立ち上がる。
「早坂?」
「ごめん、ちょっと気分が……」
「大丈夫か?」
言いながら元木くんも立ち上がり、私の肩にそっと手を添える。