溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
弟さんの、奥様……。ということは、維心さんにとっては義理の妹。親戚、だ。
呆気ない事実に、全身の力が抜ける。呆然とする私にゆっくり近づいてきた維心さんが、私の頬に手のひらを添えた。
「まさか、俺が浮気をしているとでも思ったのか? 馬鹿な。俺が愛している相手はたったひとり。悠里、きみだけだ」
真剣な眼差しに射貫かれて、ずっとずっと、喉から手が出るほど欲しかった愛の言葉を贈られる。
あまりにうれしくて、幸せで、夢じゃないかと心配で。涙をぼろぼろこぼしながら、私は彼にお願いする。
「もう一回。言って、ください……っ」
「えっ?」
「だって維心さん、ずっと言ってくれなかったじゃないですか……っ。ずっと、不安で、不安で、どうにかなりそうで……私っ」
それ以上は嗚咽で言葉にならなかった。今までも維心さんに隠れて泣くことはあったけれど、本当は彼の前でこんなふうに全部気持ちをぶちまけて、子どもみたいに泣きたかったんだ。
彼の気持ちが分かった今になって、ようやく気がついた。
維心さんはぎゅっと眉根を寄せて悔やんだような表情をした後、私の体を引き寄せて抱きしめる。そして私の髪を撫でながら、耳元で密やかに甘く囁いた。
「愛してる」
すでに決壊した涙腺から、涙が洪水になってあふれる。彼のスーツが汚れてしまうと思いながらも、その温かい胸にすがって、泣き顔を隠した。