溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「ここでは落ち着かないな。部屋を取って、ゆっくり話そうか」
「はい……でも、美久さんや弟さんは?」
「あとはふたりで話すと、美久が言っていた。彼らもふたりで話し合う時間が必要なんだ。俺たちと同じように」
美久さんと玄心さんにはどんな事情があるんだろう。気になるけれど、とりあえず自分たちの問題を片付けるのが先決だ。
私がこく、と頷くと、維心さんはそっと体を離して私の手を握る。そしてフロントに向かう直前、「早坂」と元木くんが遠慮がちに私を呼んだ。
足を止めて振り返ると、元木くんは清々しい笑顔で私に手を振る。
「よかったな」
「うん。ありがとう」
元木くんにもようやく心からの笑顔を向け、私は前に向き直る。すると今度は維心さんが首を動かし、背後の彼を見る。
「今日のところは悠里に免じて許してやるが、もし今後彼女に指一本でも触れようものなら、その時は許さない。覚えておくといい」
「……肝に銘じておきます」
元木くんは恐れをなしたように頷くと、維心さんは気が済んだ様子で前を向いた。
ゆっくり歩きだしながら、私は彼と握り合った手を一度ほどき、深く指を絡めてギュッと握った。
幸せになりましょう、維心さん。あなたと私と、それから……私たちの間に芽生えた、小さな命と一緒に。