溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
『で、用件は?』
《うん。玄心に聞いたんだけど、維心くん、お父様の代わりに博多まで出張に行くんでしょう?》
『ああ』
《ちょうどその土日、私も博多のお店にヘルプで入ることになっているの。ほら、うちって子どもいないから、こういう時いつも頼られちゃって》
美久は昔から服が好きで、大学卒業後はずっとアパレル企業に勤めている。全国あちこちの店舗に応援で出張するのもよくあることだった。
『……博多に? 偶然だな』
《でしょ? だから、夜にでも久しぶりに会えないかなと思ったんだよね。奥さんの話も聞きたいし》
なるほど。そういうことか。美久は先ほどの食事会にも来られなかったから、俺の結婚相手がどんな人物か気になっているのだろう。
せっかくだから、義妹にも悠里の魅力をたっぷり聞かせてやるか。
『ああ、接待は一日目の夜だから二日目の夜は時間がある。美久は?』
《私もそれで大丈夫》
そうして俺たちは日曜の夜に食事をする約束をし、現地で落ち合うことになった。
美久が予約した店は、彼女の泊まるホテルの二階にある、和食レストラン。福岡や長崎から仕入れた活きのいい海鮮料理が自慢の店だった。