溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 なぜ彼女が不機嫌なのかまったく理解不能だが、これ以上酔わせるのはよくなさそうだ。

 俺は残っていた料理を急いで腹の中に押し込み、隣の席に畳んで置いていたスーツのジャケットを羽織る。

 そして早々に勘定を済ませると、酔っ払った美久を軽く支えながら、レストランを出た。

『歩けるか?』
『うん……。でも、フラフラするから部屋まで送ってくれる?』

 仕方ない。乗り掛かった舟だ。それに、美久に怪我でもされたら玄心に申し訳が立たない。

 俺は世話の焼ける妹の面倒を見るような心持ちで彼女に部屋番号を尋ね、そのまま彼女に付き添い、エレベーターに乗った。さらに酔いが回ってきたらしい美久が、俺の腕を掴んでもたれかかってくる。

『ねえ維心くん』
『どうした? 吐きそうか?』

 とっさにハンカチを出して彼女に差し出すが、美久は首を横に振った。

 エレベーターが彼女の部屋のある五階に到着し、俺の腕を掴んだままでいる彼女を引っ張るようにして、廊下を進む。

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