溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
心外そうに眉をぴくりとさせた維心さんに、今度は美久さんが苦笑する。
「察しの悪さも空気の読めなさも一級品。それなのにモテるから、今まで何人の女性を泣かせてきたかわからない。そんな維心くんに愛想をつかすことなく、とことん向き合った悠里さんの一本勝ちね。本当に、深い愛情がなければできないと思う。私、悠里さんを尊敬する」
「そんな、尊敬だなんて……」
私はただ、維心さんを好きだっただけ。そして、彼にも愛されたい一心でいただけだ。
私が恐縮して身を縮める向かいでは、玄心さんが美久さんを悪戯っぽい眼差しで見つめる。
「これから美久も悠里ちゃんを見習って、俺がなにしても愛想つかさないでね」
「なにしてもって……なにするつもり?」
「うーん、例えば」
玄心さんはそう言うと、美久さんの頬にチュッと口づけをする。途端に頬を真っ赤に染めた美久さんに、玄心さんはニコニコと満足げだ。
玄心さんは、本当に美久さんが大好きなんだな。美久さんの気持ちを本当の意味で彼が手に入れる日も、そう遠くはなさそうだ。
微笑ましい光景に和んでいると、スタッフが料理を運んできてコースが始まる。
美味しい料理にますます会話も弾み、弟さんと美久さんから私の知らない昔の維心さんの話も聞けて、とても楽しい時間を過ごした。