溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「とはいえ、私も妊婦の時はそうやって落ち込んだかも。妊娠って喜ばしいことには違いないけれど、急に今までと同じことができなくなって、無性に悔しくなるのよね。赤ちゃんのためを思えば平気でしょって言われても、私にも人格あるのに……って悲しくなったり」
「そう……そうなんです」
いつもと同じ仕事ができない。お気に入りの服が着られない。ヒールが履けない。生魚が食べられない。重いものが持てない。むやみに走れない。
一つひとつは些細なことなんだけれど、降り積もるとなかなかきつい。
そして、その程度のことを我慢できない自分に、嫌気がさしたりもする。
「ホルモンバランスが崩れるせいで、落ち込みやすい時期でもあるものね。帰ったら部長にいっぱい甘えなさい。今日、出張から帰ってくるんでしょ?」
「はい。一度家に帰ってから、車で迎えに来てくれる予定です」
以前は出張帰りの彼と電車で帰宅したこともあるけれど、私が妊娠してからの彼はとても過保護。
時間が合えば強制的に車で一緒に帰るし、そうでない時はマンションに帰宅してすぐ【無事に帰れました】と連絡しなければならない。
一度うっかり連絡を忘れてお風呂に入ってしまい、電話にも出ない私を心配した維心さんが血相を変えて帰宅する、なんてこともあった。