溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「女の子、だそうです」

 勇気を出して告げた瞬間、維心さんはなんとも言えない表情になり、頭を抱えてうなだれた。同時に、深いため息をつく。

 そう……だよね。昔から、跡継ぎといえば男の子だもの。でも、赤ちゃんには何の罪もないのに、そんなにがっかりした様子を見せなくたって。

「女の子ということは、嫁ぐ可能性があるんだよな。将来」
「えっ?」
「悠里に似た可愛い娘が、どこの馬の骨ともわからない奴に奪われたらと思うと、今から頭が痛い。もちろん、気が早いとはわかっているが」

 ひどく物憂げな様子でそう話した維心さんに、私は目をぱちくりさせた。

 ええと……彼は性別自体にがっかりしたわけではなく、娘が生まれた後、しかも二十年以上は先であろう未来を悲観して嘆いているの?

 相変わらず、維心さんの考えは私の想像を軽く超えてくる。ホッとして力が抜けたけれど、まだ大丈夫と決まったわけではない。

「あの、娘を嫁に行かせたくないのはわかりました。ですが私、それより心配なことがあるんです。ご両親が期待されている桐ケ谷家の跡継ぎというのは、きっと男の子ですよね? それこそ、女の子は嫁いでしまう可能性がありますし」
「跡継ぎ? ああ、会食の時にそんな話をしていたな」

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