溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
張り止めの薬をくださいと言いたいのだけれど、お腹がぎゅう、とさらに固くなり、怖くて声が出せなくなった。
生理痛に似た痛みが断続的に続き、早くおさまってと祈ることしかできない。
「悠長に薬を飲んでいる場合じゃなさそうだな」
維心さんは冷静に呟くと、スマホでどこかに連絡をし始める。
「夜分にすみません、桐ケ谷と申します。そちらで妊婦健診を受診している桐ケ谷悠里の夫で……ええ、そうです。妻が先ほどからお腹が張って痛むようなのですが」
どうやら通っている産院に連絡してくれたようだ。
額に脂汗を浮かべながら、彼の電話する様子をぼんやり眺めていると、彼はすぐに通話を終えて私のもとに戻ってくる。
「しばらく安静にして、痛みと張りが引いたところで病院へ行く。準備は俺がするから、悠里は横になっていた方がいい」
「え?」
「切迫早産の危険があるとのことだ。とにかく、悠里はベッドへ」
切迫早産? 早産ってなに? ……流産じゃないよね?
私は自分が順調な妊娠経過をたどることしか考えていなかったので、そんな初歩的な知識さえ持っていなかった。