溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
痛みが遠のくほどに呆然としていると、椅子の前で身を屈めた維心さんが私の体を注意深く持ち上げて、横抱きにする。
そして彼が歩きだした時、私はふと足の間につう、と温かい液体が伝うのを感じた。
「維心さん、ちょっと……」
いやな予感がする。怖い。見たくない。ねえ、どうして。
「どうした? ゆう――」
維心さんが、ごくりと息を呑む。彼も目にしたようだ。私の脚を伝って床に滴った、いくつかの赤い染みに。
「どうしよう、維心さん、赤ちゃん……」
血を流しているのは、私の体? それとも、赤ちゃん自身?
お腹の中で我が子が苦しんでいるのかと思うと、かわいそうで、申し訳なくて、涙が出る。
「……大丈夫だ。大丈夫に決まってる」
「でも」
「絶対に大丈夫。そう信じて休むのが、今のきみの仕事だ。俺はもう一度病院に連絡し、出血があると報告して、指示を仰ぐ。もう一度言うぞ。……絶対に、俺たちの子は大丈夫だ」
維心さんは強い口調でそう言い聞かせると、血液でシーツが汚れるのも構わず私をベッドに寝かせ、スマホを耳にあてながら寝室を出ていく。
絶対に、大丈夫……お母さんの私が信じてあげなきゃ、ダメだよね。
お願い、どうか、どうか、お腹の中で元気にしていて。
私は不安でカタカタと震える体を自らの腕で抱きしめ、ひたすらに赤ちゃんの無事を願った。