溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
「ええと、見積書……」
実際にお客様と顔を合わせることは少なく、営業担当と違って数字で評価されることもない地味な仕事。
それでも辞めたいと思ったことはないし、なにより営業一課のメンバーはとても優しいので、彼らの役に立つことが私のモチベーションだ。
「今日も頑張ってんな」
作業中、ふと声を掛けられたので顔を上げる。そこにいたのは、おでこをスッキリ出した短髪が爽やかな同期の男性社員、元木くんだった。
パーテーションで仕切られた隣のオフィス、営業二課に所属していて、なにかと話しやすい男友達でもある。
「元木くん、お疲れさま。どうしたの? 一課になにか用?」
「いや、通りかかったから覗いただけ。ついでにこれ、やる」
元木くんが差し出してきたのは、缶のエナジードリンク。
ありがたい差し入れに私は目もとを緩め、受け取りながらお礼を言う。
「ありがとう。定時に帰れるように頑張る」
「おう。俺も頑張――いてててっ」
話の途中で、いきなり元木くんが誰かに後ろから羽交い絞めにされた。